ソトのガクエンについて

はじめまして、「ソトのガクエン」代表の小林卓也と申します。「ソトのガクエン」は、もう学生でなくなったけれど何かを学びたいという方々に、学ぶ機会と学ぶ楽しさを提供することを目的として2021年5月に開設されました。

人はふとした時に、いろいろなタイミングで、何かを学びたい気持ちや何かを学ぶ必要が生じます。しかし、多くの場合、すでに社会人として活躍していたり、すでに主婦(主夫)となり家庭を守っていたり、すでに定年退職をしていたりと、学習や学びから遠ざかってしまっているのではないでしょうか。「学生のときにもっと英語を勉強しておけばよかった」「学生のときにもっと世界について知っておけばよかった」と、私自身も後悔することが多々あります。

しかし、よくよく考えてみると、学びというものは、はたして学生だけが得られる特権なのでしょうか。そんなことはありません。人はいつでも、どんなときでも、自分が学びたいときに学びたいだけ学べばいいのです。問題は、そんな方々に、学びや学ぶ楽しさを提供する場が社会のなかにまったくないということです。もしかすると、「学びは学生の特権だ」というのは、社会の側が望んでいることなのかもしれません(要するに、学生でない者は社会に出て世のため人のために労働に専念しなさいというわけです)。大切なことは、学生のように時間に余裕がない人たちに、どのような形で学びを提供できるのかということだと思います。

私は、大学院在籍時から現在にかけて、いろいろな大学で「哲学」を学生に教える講義を行ってきました。そこで、いつも学生に伝えていることがあります。それは、哲学を学ぶことは、単なる知識の習得ではないということです。哲学は、自分の考えを整理したり、自分を客観視することの重要性を学ぶことのできる、おそらく唯一の学問です。哲学は、自分がこれまで当たり前だと思っていた常識や習慣を疑い、よりクリエイティブな発想をすることのできる視点や観点に立つことを可能にします。そして、哲学から学ぶことは、これから社会に出ていく学生にとって必要であるばかりではなく、むしろ、日々、さまざまな情報に流され、自分を見失ってしまいがちな、現代社会のなかで生きる人たちにとってこそ、まさに必要なものだと思うようになりました。社会人の方々、専業主婦(主夫)の方々、定年退職された方々をはじめ、なんらかのかたちで学びの場から遠のいてしまった方々に、哲学を勉強することの大切さ、そして何より楽しさをお伝えする場を提供したいと考え「ソトのガクエン」を設立しました。大学のソトでしか学べないことは何なのか、大学のソトで学ぶことの楽しさとは何なのかを追求し、このブログでも発信していきます。

よろしくお願いいたします。

小林卓也(ソトのガクエン代表)
1981年京都生まれ。大阪大学人間科学研究科出身(人間科学博士)。専門は現代フランス思想。現在、京都産業大学、関西学院大学の非常勤講師として学生に哲学を教えるかたわら、哲学的思考や哲学的な生き方が現代においてもつ重要性を、一般の方々にも分かり易く伝える活動を行っている。哲学的思考コンダクター。
著書に『ドゥルーズの自然哲学|断絶と変遷』(法政大学出版局)、共訳書にジル・ドゥルーズ『ベルクソニズム』(法政大学出版局)他論文多数。